「世界の中の日本、アジアの中の日本」セミナー@日本ワインを愛する会 [ワインイベント]

ものすごい内容と情報が濃かったので(汗)
ギャスティンさんのお話を拾いきれているかはわかりませんが。
↓熱く語るデニスギャスティンさん(と通訳の方)


■アジアでワインが造られ始めたのは250年前。
中国でも、ようやく19世紀から。
遅れた理由は
(1)宗教の違いによる伝播の遅れ
(2)ヨーロッパと交易する港が限られていた
1967年に、はじめて現代的なヨーロピアンスタイルの
シャトーチャンインが山東省に存在していたものの、
ボルドーから本格的に技術が転移されだしたのは、
ようやく1980年以降。
現在アジアでワインを生産しているのは12カ国。
ワイナリーの総数は800(うち400以上は中国に)。
さらに100以上のワイナリーは
まだワインを造り始めて10年以内。
■韓国
韓国には11のワイナリーが存在。
最大の生産者はマジョアン。
しかしまだ輸入バルクで造っている段階。
2位のシャトーマニー、3位のデイブーは、ともに協同組合形態。
ギャスティンさんのお気に入りの生産者は
イーストオブエデン。100%山葡萄のワインを造っている。
■ヴェトナム
ワイナリーの多くは南部のダテルにある。
カーディナル種から造っている。
■インドネシア
あのバリ島にも3つのワイナリーがある。
そのうちの1つはフランス人醸造家が造っている。
デザートワインに関しては
ロンドンインターナショナルでも銀賞を獲るほどの実力。
■台湾
いま注目すべき生産国。政府の強力な主導のもと、
ブドウ栽培がどんどん推奨されている。
■スリランカ
ブータン王国の王族経営のワイナリーがある。
技術はオーストラリアからどんどん吸収している。
■ミャンマー
5年前にできたワイナリーが1つ。
1年前にできたワイナリーが1つ。
ドイツ人が投資。 標高1300mのところでワインが造られている。
現在80品種が栽培され、最適品種をさがしている。
カベルネ、シラー、ドルンフェルダー、テンプラリーニュ
シャルドネ、バルベラ、なかでもマスカットに良い結果がでている。
■タイ
1993年からワイン作りが本格的に。
生産地は北緯8度~15度の範囲内に集中。


バンコクのサイアムワイナリーでは
畑が水路で囲まれている「水上畑」で栽培。船で周囲を移動。
↓すごい!っていうか葡萄が水を吸いまくりやないですか!
世界のセオリーに反するとは、さすが魔法の国、タイだ…。



良い結果を出している品種は
白は、マラガブラン種(セミヨンに似ている。葡萄の粒が細長い)。
赤は、ポックダム種(ブラッククイーンに味わいが似ている)。
ラオスの近くにあるシャトー・ド・ロエイは
建設会社が投資する現代的なワイナリーで注目。
シュナンブラン、シラーを作っている。
その他、挙げるとすれば、
カオヤイ国立公園の近くにある3つのワイナリー。
シンハービールが経営するカオヤイワイナリー。
ヴィレッジワールワイナリー。
グランモンテワイナリー。
注目なのはグランモンテワイナリー。
わずか5haの畑を25人が担当している。
ここで造られているのはシュナンブラン、
シラー、コロンバール種。
さらには中部のシャラランワイナリー。
チェンマイにメイチャンワイナリー。
■インド
ムンバイの近くに450ものワイナリーが。
ナシックとフネエリアが注目に値する。



↑なんか、よーく見ると、真ん中にゾウ?がいるんですけど…。
シャトー・インダーシュ。
1980年代にできたインド最大の生産者。
主にフランスの技術を導入してスパークリングワインを造っている。
シャルドネ、ユニブランがメイン。ピノノワールは難しい様子。
スラ・ワイナリー。
ナシックエリアに存在。
シリコンバレーのコンピュータ業界で成功したオーナーがその財産で1993年に設立。
1998年がファーストヴィンテージ。年産25万ケース。
アメリカでの影響を受け、単一品種での個性を引き出すことを目指している。
ヴィオニエ、リースリングの生産にも乗り出している。赤は主にシラーズ、ジンファンデル。
マルベックの発売が迫る。シラーズよりもマルベックに良い結果が出ている。
■中国
INAOの資料によれば、
もう、世界第6位のワイン生産国になっている。
北京の北の内陸部からワイン栽培がはじまった。
ほとんどは色づけや味の添加などがなされており、
ハーフジュースワインと呼ばれていた。
2006年から新しい法律が制定され、
こういったものはワインという呼称を使えなくなった。
中国全土での葡萄畑の面積は45万ha。
これはアルゼンチン+チリの合計面積よりも大きい。
そのうち、現在は、7万ヘクタールがワイン用。
これはオーストラリアの畑の半分に相当する。
トンワ・ワイナリー。
日本人によって投資されたワイナリー。
主に、山ぶどうからワインを造っている。
山西省エリアに、グレイス・ヴィンヤードがある。畑面積は500ha。
中国の投資家の投資を受け、フランス人が栽培を担当、自社畑の比率が高く、
オーストラリア人醸造家がワインを造り、国際的評価も高くなってきている。
最もエキサイティングなのがウイグル自治区。
ヴィニサンタイム社。ベンチャープロジェクトによるワイナリー。
1998年がファーストヴィンテージで、当時で1万ha、300トン。
2007年には1万5000トンを収穫するに至る。
このエリアは北海道よりも寒く、
夏は短いが、雨がほとんど降らない。
さらにこのエリアには
4つくらいのワイナリーが設立されている。
(北京に近い、主要なワイナリーが存在する山東省は台風が多く、
実は山東省のワイナリーは、このウイグル自治区の葡萄もブレンドしている)
エベレストに近い雲南省にも12のワイナリーが存在し、
2つの国際レベルのワイナリーがある。そこには香港の資本が投下されている。
150年前にキリスト教とともにやってきたローズハニー種。
中国のワインマーケットがとても大きくなってきた。
北京の北には中国とフランスの共同研究畑がある。30ha。
ハーベイエリアで何が最適品種かをさぐっている。
なかでもマセラン種に良い結果がでている。
カベルネの骨格+グルナッシュの果実味と香り。
(ギャスティンさんはこの品種が中国で一番良かったと言っていた)
生産量ではグレートウォールワイナリー、
ダイナスティワイナリー、チャンマーワインがTOP3。
それに続く第四位がヴィニサンタイム(ウイグル自治区)。
デイリーワインから100~150ドルクラスのものまで造っている。
中規模生産者では
ドラゴンシール、グレイス、ウェイロンが注目に値する。
↓整然とした中国の畑。広い!!!



・・・ふぅ。
とまあ、内容てんこもりでしたですよ!
生産量ではガンガン突き進む中国なのですが、
クオリティーではインドが頭ひとつ抜けている印象。
ギャスティンさんいわく、中国とインドのちがいは
畑のコンディションをコントロールできているか、できていないかの差だそうです。
環境にあった品種を探していたり、現代的なつくりに変わるのには、
まだ時間がかかるのでしょうけれど、海外資本が大量に投下されているのは脅威的。
お金がすべてを解決するとは思えないのですが、
お金が近道を手に入れる手段であることは間違いないでしょう。
そして資本関係にまつわる世界的なコネクションをいかして、海外醸造家を招きいれ、
おもにフランスのワイナリーからノウハウや人材、技術を直接導入していることは
中国内部の人たちが
どうにか海外に展開しようとしているということではなくて、
最初からヨーロッパやアメリカの基準や視点を目指して、
旨みのある、おいしい卵を孵化(ふか)させようとする
手段を選ばない投資→回収の力学が見え隠れします。
すごくダイナミックな動きが、おなじアジアで発生しいるようです。
やっぱり、味の美味しさは前提としてあるけれども、
大量生産できてゆくゆくは世界市場で売れるワインを造る可能性がある
っていうのは資本的にも人材的に注目されるんでしょうね。
近いところで言えば、14億人の中国国内マーケットもあるし。
チリとかアルゼンチンに進出したみたいに
ラフィットとかイタリアの著名グループも中国進出!?
なんてことが起こる日もきちゃうんでしょうか。
ギャスティンさんが最後に言っていたことは、
・日本のワインはこういうものだ示すワインとともに、
コンセプチュアルな個性が必要である。
・単一品種の個性にこだわることも必要だが、ブレンドによって際立つ道もあるはず。
とくに甲斐ノワールとメルローのブレンドはきっと面白い結果をもたらすはず。
(これはギャスティンさんと、不肖:たこやき坊主の意見が一致していた!!!)
・そしてなにより、もっとPRを。
アジア各国のワインはロンドンの600以上のショップで並んでいる。
日本食ブームや、ヘルシー志向の波を上手に活かして、
日本のワイン業界ももっと積極的にセールスしていくべき。特に甲州。
うかうかしていられないぞ!日本ワイン!
・・・と思ったけど、
テイスティングしたら日本のワインの美味しさって
抜 群 で す ワ 。
とはいえ、それは今の段階でのこと。
確実に、追っかけてきてます。
たくさんお金を握ったアジアのワイナリー集団が。
いちはやく世界の中で
「アジアのワイン王国と言えば日本でしょう!」と認めてもらって
アジア代表のイス獲りゲームに勝っておくことが、
戦略的にも、すごく重要な気がしますね。
洞爺湖サミットとかで使われたワインの情報とか
ほーんと出てきませんもんね。
国内ですら耳にはいってこない。
ましてやせkっかう世界のプレスが集まっているのに、もったいない。
もったいないというか、
対外的にもっと戦略的にPRすることを
個々のワイナリーが個人戦で戦おうとするのではなくて、
日本ワイン協会とかアッサンブラージュの会みたいなところが
代表チームを組んで乗り込んでいくとか、やっていったほうがいいのでは?
だって、著名なブルゴーニュの生産者でさえ、
日本に乗り込んできてガツガツ売込みしてますもん。
毎年「今年のワインは、難しいヴィンテージだったけど、私達はうまくできた」とか
あーもうそうですかそうですかと思っちゃうほどに、商売魂ムキ出しで。(笑)
とか思いつつ、メチャ長文なので〆マス。